デジタルモデリングの可能性を追求する~意匠研究所の取り組み~
多治見で陶磁器の話をしているとよく耳にする「意匠研」。
この意匠研 とは、「多治見市陶磁器意匠研究所」のことです。
多治見市陶磁器意匠研究所(以下、意匠研究所)では、やきものを学ぶ研修施設として陶磁器デザイナーやクラフトマン、陶芸家を志す方への人財育成や、地元の陶磁器業界に対して陶磁器製品開発を支援するための業界支援、安全・安心な製品流通の為の検証などの依頼試験などを行っている施設です。
意匠研究所では、陶磁器業界に対するデザイン支援として、平成30年度から3Dプリンター、3DCAD、3Dスキャナーを活用した「3Dモデリング」の研究会を開催しています。
普段私たちには聞きなれない「3Dモデリング」、またこの意匠研究所と事業者との研究会でどんなことが進められているのでしょう?A2web編集チームの日比野が実際に研究会に同席させてもらい、レポートします。
3Dモデリングって?
最近よく聞く3Dという言葉ですが、研究会では「そもそも3Dモデリングとは何ですか?」という初歩的な質問から始まりました。
答えてくださったのは、意匠研究所のデザイン・技術グループの山下奈穂さん。
「3Dモデリングとは、3Dモデルを作成する工程のことです。その3Dモデルを作成するために必要なのが意匠研究所に揃っている3DCAD、3Dプリンターや3Dスキャナー等の機械です。」
3DCADは、3次元(3D)データの作成を行うCADのこと。平面で行っていた2次元図面(2D)をコンピュータの中で2次元の図面から3次元の立体データを作成します。そうすることで、より具体的なイメージを掴みやすくなります。3Dプリンターとは3DCADの設計データ(STLデータ)をもとにして、スライスされた2次元の層を1枚ずつ積み重ねていくことによって、立体モデルを製作する機械のことです。そして3Dスキャナーは対象物に青色LED光を照射して、立体的な形状を取得しデジタルデータ(3Dデータ)に変換する為の機械なのです。
なんとなく、イメージが沸いてきました。
3Dモデリング機器活用研究
令和2年度からは岐阜県石膏型組合多治見・滝呂支部組合員有志9社と連携して「3Dプリンター・3DCAD活用造形技術向上研究会」を開催しました。
研究会では美濃焼製造の根幹を支える既存の石膏成型技術に加え、樹脂型と3Dモデリング技術の新たな活用方法について、現場に一番近い原型師さんと現実的な観点から模索を進めています。
また令和3年度には市内の飲食器製造、モザイクタイル製造、陶磁器石膏型製造の業界団体と共同で、それぞれの業界毎に3Dスキャナーの効果的な活用方法を探る研究会が始まりました。
既存形状のサイズ変更や、古い製品の原型作成などの可能性が広がる
飲食器メーカーを中心とした高田・市之倉・滝呂地区の陶磁器工業協同組合との「3Dスキャナー活用研究会」では、既存製品のスキャンデータを用いて製品のサイズや形状を変更したバリエーション展開、石膏型が残っていない古い製品の原型再生、スキャンしたテクスチャーを既存製品にマッピングするなど、リバースエンジニアリングにおける3スキャナーならではの有効性を、実際の商品製作を通しての共同研究が進んでいます。
またモザイクタイルのメーカーを中心とした笠原タイル業界との「3Dスキャナー活用研究会」では、植物や石材などの天然素材のスキャンデータを用いてモザイクタイル面状の用樹脂ローラー、乾式プレス成型用樹脂型によるタイル試作など、製品開発に直結した3Dスキャナーの活用方法を研究しています。
今年度は陶磁器×タイル 枠をこえて合同の取り組みもスタート
今年度は新たに4社加わり、市内18社の事業者と一緒に3Dモデリング機器活用研究会が進んでいる
そして、今年度の「3Dモデリング機器活用研究会」は、陶磁器業界における業種の枠を越えて、飲食器製造業とモザイクタイル製造業の企業が合同で製品開発に向けた取り組みを行っています。
この研究会での研究成果発表の場として、来年2月には多治見市PRセンターで成果品の展示と販売も予定されています。
こうした意匠研究所と事業者との共同研究「3Dモデリング機器活用研究会」での取り組みを、A2webでお伝えし、3Dモデリングを通した陶磁器、タイルの新しい可能性をみなさんに広く知ってもらえたらと思います。
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