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例) 多治見 まち イベント

場所  2024.06.10

東濃地方における救急医療の課題とは? “何でも診る病院”を目指す「のむら・笠原クリニック」の強い思い

あっつう度

私たちの生活に欠かすことのできない医療。人口減少・少子高齢化といった情勢の中、医師不足や医療施設の偏りなど地域医療の課題が顕在化しています。これらは私たちの暮らす岐阜県東濃地方でも直面している状況です。

 

地方の医療課題を打破するべく、多治見市笠原町で「初期の救急医療」に力を入れている病院があります。今回は、岐阜県では数少ない日本救急医学会救急科専門医でもある「のむら・笠原クリニック」の野村公志院長にお話を伺いました。今後、私たちの暮らすまちの地域医療はどうなっていくのでしょうか? 笠原愛の強い野村院長の思いとともに、身近な救急診療の事例も交えてご紹介します。

 

 

そもそも「救急診療」とは? 救急のゲートキーパーとなる「一次救急」の存在

 

 

「救急診療」といえば、重症で救急車に運ばれる状況をイメージする人が多いのでは? 命に関わる危険性が高く、緊急手術が必要な患者を対応する救急を「二次救急」「三次救急」と言います。その前段階に「一次救急」があるのをご存知でしょうか。

 

自力で来院できる軽症患者や、入院や手術の必要性が低く外来で対応できる患者の診療を行うのが「一次救急」です。「救急車を呼ぶほどではないが、すぐに診てほしい」といった状況の場合、一時救急を利用するのが適切です。

 

重篤な症状だけを対応するのが救急医療ではありません。「ちょっとおかしいな?」「休日だけど今日診てほしい」と感じたときに駆けこめる一次救急。この行動が命を救うきっかけとなるケースは多々あります。

 

のむら・笠原クリニック 野村公志院長

 

この一次救急に力を入れているのが、のむら・笠原クリニックです。多治見市モザイクタイルミュージアムから程近い場所に位置する当院は、妻の翔子副院長とともに2019年に開院しました。

 

野村院長は、愛知医科大学を卒業後、岐阜県立多治見病院での臨床研修を経て、東濃厚生病院 外科、中濃厚生病院 救急科、愛知県がんセンター愛知病院 消化器外科医長、多治見市民病院 救急総合診療部 部長代行とさまざまな病院での勤務歴があります。その経験を生かし、内科・外科・小児科・整形外科・リハビリテーション科を標榜し、さまざまな症例に対応しています。その中でも特に力を入れているのが救急医療です。

 

「現状、東濃地区に救急専門医は5人しかいません。岐阜県立多治見病院の三次救急に2人、多治見市民病院に1人、中津川市に1人、そして私だけです。救命救急センターがあるような大病院が多い都心部に救急医が集中しがちなのです」と地方の救急医不足について野村院長は語ります。

 

 

救急医療を正しく理解することで、救われる命がある

 

クリニックの裏口には、救急車が入る導線も確保している

 

重症患者への入院治療や手術などを行う二次救急、より重篤な患者や特殊疾患患者を受け入れ、高度な救命救急医療を行う三次救急。三次救急医療機関として地域の救急患者を最終的に受け入れる救命救急センターは、全国に304ヶ所あります。(2023年12月時点)

 

救命救急センター設置状況一覧(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32614.html

 

 

意識がない、動けない、大量出血など一刻を争う状況の場合は、命に危険がある可能性が高いため救急車を呼びましょう。しかし、自力で動けて意識がある場合は、徒歩や家族の運転するクルマ、タクシーなどで一次救急を診療することができます。

 

「たとえば自宅で胸が苦しくなって三次救急にかけこんだ場合、三次救急の処置が必要な患者はその内の1割程度。自力で動ける、家族に連れられて受診ができる状態の場合は、かかりつけ医や休日夜間診療を行う病院で診察し、医師が必要と判断した場合に二次救急へ紹介することもできる。医師から紹介があるため、紹介先でも適切な処置が可能となります」

 

 

一次救急の必要性は、限られた救急医の人数と関係しています。二次救急・三次救急への偏りは医療従事者の疲弊につながり、地域の医師不足を加速させてしまうため、救急医の少ない地方都市の一次医療はとても重要な存在です。

 

また、三次救急でしか助けられない患者と一次救急で対応できる患者のどちらもが大規模の救急病院に集中することによって混雑が生まれ、待ち時間は増えるばかり。救急搬送の受け入れ拒否といった問題も発生しています。長年、救急専門医として救急医療の課題に直面し続けた野村院長。こういった状況を少しでも改善できるよう、のむら・笠原クリニックでは土日診療を行っています。

 

 

「のむら・笠原クリニックは土日の診療も一切断りません。これは、二次救急・三次救急の対応ができる病院の負担を少しでも減らしたかったから。うちで患者さんをスクリーニングして、必要があれば二次救急・三次救急の病院へ紹介する。さまざまな病院での勤務経験があるので、どの病院がどの科が強いのかも理解しているし、他病院とのネットワークもあり連携できています」

 

のむら・笠原クリニックは土日診療であっても平日と全く同じサービスを提供しています。「もはやこれは意地なんですよね」と笑顔で話す野村院長。命の砦とも言える二次救急、三次救急を守るべく、最高の初療医を目指す姿勢。東濃地方の医療をより良くしたいという強い信念を貫いています。

 

 

先祖がタイル産業に従事していた笠原の地で開院した理由

 

笠原の杉江製陶が作成した、タイルを施したクリニックのシンボルマーク

 

地方の医師不足は全国的な課題となっています。その背景には、都市部の医大で学んで医師免許を取得しても地元へ戻ってくる人が少ない傾向もあるのだとか。小学生の頃から医師になると心に決めていたという野村院長。多治見北高校を卒業後に愛知医科大学で学び、各地の病院勤務を経た後、なぜ出身地の笠原でクリニックを開院したのでしょうか?

 

「僕の先祖は笠原町で野村陶料という会社を営み、タイルや茶碗を作ってきました。窯業に尽力していたけれど世の中の流れが厳しいと判断し、私の母は笠原で歯科医になりました。先祖代々、笠原に根付いて商売をし続けてきた精神を見習って、自分が開院する場所は笠原だと決めていたんです」

 

クリニック入口には作善堂のタイルシンクも

 

先祖への感謝とともに、生まれ育った地元への貢献が念頭にあった野村院長。現在は、地元のタイルメーカーの産業医という立場で窯業に関わっているそうです。

 

「いまタイルメーカーで働いている人の祖父母たちと僕の祖父母たちは、もしかしたら当時は一緒に仕事をしていたのかもしれない。かたちは違っていても医師と言う立場として、タイル産業に貢献できていると思うと感慨深いですね」

 

笠原のタイルメーカー・杉浦製陶や杉江製陶、タイルシンクでおなじみの作善堂とも関係が深く、クリニックの外観や内装にも随所にタイルが使われています。地元産業の人たちに刺激をもらいながら地域を支えることに注力しているそうです。

 

 

救急専門医として、「何でも診る」という覚悟とともに

 

勇気を与えるために、リハビリ室にはイチロー選手のユニフォームを飾っている

 

内科、外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科を標榜に掲げるのむら・笠原クリニック。地域のかかりつけ医を目指し、「何でも診る」というこだわりを大事にしています。

 

しかし、2019年に開院後半年でコロナ禍に突入。何でも診るために急きょクリニックに隣接する土地を借りて、新型コロナウイルス感染者の診察スペースを確保したそうです。

 

「根源のポリシーが大事ですよね。自分のためだけだったらここまでやれない。医療や地域全体のことを思ってやっているから」

 

隣にあるタイル工場跡の土地を借りて、新型コロナウイルスの対応ができる外来を設置

 

救急診療の多くが一次救急で対応可能な症例だとしても、逆に小さな不調から大病が見つかるケース、緊急手術となる事例も少なくありません。そのため、少しの異変や不調でも気兼ねなく来院してほしいと野村院長は話します。

 

「救急に連絡して断られた場合でも、うちは何でも診るのでとりあえず来てほしい。適切な病院を紹介できますし、一次診療を経たことで受け入れてくれる二次救急・三次救急もある。“何でも診る”なんて救急専門医じゃないと言えないですよ。笑」

 

 

最後に、いまの多治見のまちについて感じていることについても伺いました。

 

「多治見は、観光と教育に力が入っている熱量を感じています。医療という分野でも、みんなが安心できる環境になったらいいですよね。多治見は医療・教育・観光が充実していて素敵なまちだよね、と言われる地域を目指したいですね」

 

土日診療ができるクリニック、一次救急を対応する救急専門医がもっと増えてほしい。その思いで発信を続けていく野村院長。これからも岐阜・東濃地方の救急医療のハブとして、地域を支えていきます。

 

 

【問い合わせ】

のむら・笠原クリニック

【住所】多治見市笠原町字権現2200-162

【電話番号】0572-45-1020

【ホームページ】https://nomura-k-cl.com/

のむら・笠原クリニック

507-0901
多治見市笠原町字権現2200-162
TEL 0572-45-1020
https://nomura-k-cl.com/

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