笑顔で食卓を囲むのが元気のもと 「鰻の街たじみ委員会」の願い
2022年8月4日。明日は、今夏2度目の土用の丑の日です。土用丑と言えば「ウナギ」。この日が近づいてくるとスーパーのチラシや情報番組でも特集が組まれたりして、目にする機会が増えますよね。画面ごしにも伝わる、皮はパリッと、身はふっくらジューシーに焼きあがる様子。そこからもう芳醇な香りが漂ってきそうです。暑さに負けそうになるこの時期にも、食欲をそそられる魅惑の食べ物・ウナギは、多治見グルメには欠かせない存在です。
そもそも「土用の丑の日」って何?
土用とは
陰暦で「立春・立夏・立秋・立冬」前の各18日間のこと。一般には立秋前の夏の土用をいう。
丑の日とは
十二支の丑にあたる日。
※出典:「現代国語例解辞典(小学館)」
十二支と聞くと、毎年変わる「干支」を思い浮かべますが、昔は日にちを十二支で数えていました。つまり「土用の丑の日」は、土用の期間に訪れる丑の日を指しています。
2022年度の土用の丑の日
春:4月18日(月)、4月30日(日)
夏:7月23日(土)、8月4日(木)
秋:10月27日(木)
冬:2023年1月24日(月)
先にもあった通り、一般的には「夏の土用」の「丑の日」にあたる日にちを「土用の丑の日」と呼ぶのですが、季節ごとに必ずあるものとは驚きでした。昔から夏の土用に食べる風習があるウナギは滋養強壮に良く、夏の疲れが出やすい今の時期にぴったり。先人の知恵ってすごいですね。
なぜ多治見でウナギが名物になったのか
多治見にはたくさんのウナギ屋があります。
昔から多治見では、陶工たちが窯の炎の熱さで消耗した体力を回復するために、高たんぱく質で消化の良いウナギが重宝されてきました。そこから日常的にウナギを食べる習慣が根付き、現在に至るというのが、所説ある中でもっとも有力な説です。
同じウナギでも店ごとに特色があり、その味を求めて遠方から訪れる人がいるほど名物となっています。そして、ウナギが身近なまち・多治見には「鰻の街たじみ委員会」があるのをご存知ですか。
鰻の街たじみ委員会で解消できた悩み
委員会のメンバーは、市内でウナギ料理を提供する「魚関」、「うな千」、「澤千」、「松正」の4店舗。これまでも、さまざまな情報交換をされていたそうですが、共通の悩みがあったのだとか。明治時代に建てられた建物で、四季折々の料理を味わえる老舗料亭・松正(まつしょう)の長尾信子さんにお話を伺いました。
「悩みは、ウナギにふりかける海苔。一般的な海苔はサイズが大きく、細かく切ってお出ししていたのだけど、全部使い切る前にどうしても湿気ってしまうから廃棄せざるを得なくて。すごくもったいないことだから、それぞれの店が個包装の海苔を探していたのね。でもちょうどいい量のものがなかったり、コスト面でも折り合わなかったり……。食べる直前に開封することでよりおいしくウナギを味わってもらいたい。みんな同じ悩みを抱えていることが分かったから、お金を出し合って個包装の海苔を買おうという話になったんです」
その後、魚関さんのつながりで長野県にある「岡田海苔」さんと出会ったのだとか。岡田海苔さんも、コロナの影響で出荷数が減り、これまでのやり方だけではなく、さまざまなニーズに柔軟に応えていこうと考えているところだったそうです。オリジナルパッケージに加え、比較的少ない数からの注文にも応じてくれています。
多治見を訪れてくれた人のために
「パッケージには、各店舗の写真を載せるという案も出たんだけど、今はインターネットで検索ができる時代。せっかく多治見に来てもらったのだから、多治見のことを知ってもらった方がいいよね!というのが、私たち共通の思いでした」
表面には、虎渓山永保寺やモザイクタイルミュージアムなど市内の公共的な施設の写真とQRコードが、裏面には鰻の街たじみ委員会の店舗のロゴがプリントされています。「公共性を保ちながら、掲載する場所を増やして、どんどん多治見をPRしていけたらと思っています」と長尾さん。鰻の街たじみ委員会がつくるオリジナルの海苔は、各店舗で1個(30円)から購入できるそうです。
ともすれば、ライバルという考え方もできる同業者。しかし、長年の悩みが、お店同士のつながりの中で解消されました。多治見を訪れた方への感謝の気持ちがあふれる取り組みです。
多治見のあっつ~夏を乗り切るために
「ぜひ、ウナギを食べて、暑い夏を乗り切りましょうね」そう笑顔で話す長尾さん。さらにこう言葉を続けました。
「ウナギを食べることもそうだけど、楽しく食べることって大事よね。今の時代は、黙食とか孤食とか言われているけれど、楽しく食べるのは元気の素。食べる人や雰囲気で、高価なモノでもおいしく感じない時ってあるじゃない(笑)。逆に、何の変哲もないおにぎりでも、みんなで楽しく食べたらとってもおいしいものね。笑い合って食べる食卓が今は当たり前じゃないからこそ、そういう瞬間が幸せだよね。その一つとしてウナギを食べてもらえたらうれしいな」
■鰻の街たじみ委員会
※ラストオーダーの時間は各店舗にお問い合わせください
〇老鰻亭 魚関
多治見市本町4-32-1
電話:0572-22-5355
営業時間:11:30~14:00/17:00~21:30
定休日:不定休
〇うな千
多治見市青木町1
電話:0572-22-3410または 0572-24-0566
営業時間:11:00~14:30/16:30~20:30
定休日:水曜日
〇澤千
多治見市本町5-24
電話:0572-22-3115
営業時間:11:30~14:30/17:00~22:00
定休日:水曜日
〇松正
多治見市本町5-29
電話:0572-22-5195
営業時間:予約営業