岐阜のものづくりを体感できる宿泊施設 日本最大の陶磁器とタイル産地・多治見のゲストハウス「宿 一景」
陶芸体験やミュージアムなどを目当てに多くの人が運ぶ多治見に個性的な宿泊施設が増えています。その一つが、2024年11月に多治見市小田町で開業したゲストハウス「宿 一景(いっけい)」です。
美濃一景をテーマに柱や梁が美しい日本家屋を宿泊施設に改修。美濃焼の産地の歴史や文化とともに、暮らすように泊まる宿として開業しました。タイルや家具、照明からお風呂まで、地域の技術や素材を贅沢に取り入れ、多くの地場産業が存在する岐阜県ならではの意匠を散りばめたゲストハウスです。
今回は、一景のオーナーであり、タイルのファブレスメーカー「X-is(エクシィズ)」取締役会長の笠井政志さんに取材。宿が誕生する敬意やこだわり、多治見のまちへの思いなどを語っていただきました。岐阜のものづくりに触れられる宿の詳細も、写真をたくさん交えながらご紹介します。
2024年11月にオープン 岐阜のものづくりに触れるゲストハウス

一景のオーナー・笠井政志さんが1998年に設立した株式会社エクシィズ(多治見市旭ヶ丘)は、暮らしを彩るタイルから、オーダーメイドタイルなど、日本国内から世界までボーダーレスにタイル製作を手掛けている会社です。
2021年に発足したセラミックバレー協議会の初代チェアマン、多治見美濃焼卸センター協同組合の理事長も務めています。タイルを通じて産地を盛り上げてきた笠井さんが、なぜ宿を始めることになったのでしょうか?
「きっかけは、スイスとの取り組みです。2023年にスイスが陶磁器アーティストの育成に向けた視察として、有田や京都など日本の陶産地を回っていました。多治見を訪れた際、私が鉱山や工場、織部ストリートなどを案内させていただくことに。その後、スイスからアーティスト・イン・レジデンスの協力要請をいただき、多治見市で3週間、若手アーティストを受け入れることになりました」

アーティスト・イン・レジデンスとは、「作家滞在型制作」とも呼ばれ、国内外のアーティストが地域に一定期間滞在し、創作活動やリサーチを行う活動のことです。アーティストたちが異なる環境や文化に身を置き、新たな発想を得て作品に展開していきます。制作はエクシィズの工房に使うことになりましたが、市内でアーティストたちが長期滞在できる場所がなく困惑したそうです。
「そこで使っていなかった実家の改装を思いつきました。11月からの滞在に向けて、岐阜の職人に手掛けてもらい、2カ月間の急ピッチで古民家の全面改装を完了しました」
猛スピードではあるものの、施設全体の意匠は隅々までこだわりました。海外の人が宿泊することを考え、天井やドアの高さを上げるなどの大きな工事も行っています。大人数での宿泊も可能のため、ヒノキ風呂の浴室とは別にシャワーブースを作るなど使う側の視点に立った空間デザインを施しています。
隅々まで地場産業の息吹を感じる、洗練された設え

JR多治見駅から歩いて15分。静かな住宅街の中にたたずむ一景は、美濃一景をテーマに柱や梁が美しい日本家屋を宿泊施設に改修。美濃焼の産地の歴史や文化とともに泊まる宿として開業しました。
「“オール岐阜”で宿をつくりたいという思いがありました。美濃焼の器やタイルはもちろん、美濃和紙を使った照明器具、家具は高山、東濃ヒノキを使ったお風呂、包丁は関の刃物、安八郡で作られたタオルなど、岐阜のものづくりに触れられる空間提案です」
美濃焼タイルと陶器だけではなく、タイルや家具、照明からお風呂まで、地域の技術や素材を贅沢に取り入れ、さまざまな岐阜の伝統産品で仕上げています。岐阜のものづくりを体感しながら暮らすように宿泊できる施設です。

1階にあるダイニングルームには、全長3.2mのケヤキの1枚板テーブルが置かれています。大人数にも十分対応できるためグループの会合やパーティーなどにも利用できるスペースです。

ダイニングテーブルの横には、広々としたキッチンスペースが。壁面には多治見産のタイルが貼られています。ガスコンロやシンク、冷蔵庫、電子レンジ、食洗器などの充実した設備を完備。食器や調理器具なども揃っており、滞在中に近くのスーパーで食材を買って料理を楽しむことができます。

吹き抜けのある1階部分には、解放感のあるリビングダイニングが。デザイナーズソファーと囲炉裏付きのテーブルを配置しており、家族や友人同士でゆったりくつろげる空間が広がります。特に目を引くのは、壁一面に貼られた美しいデザインのタイル。自社で取り扱う意匠性の高いタイルを贅沢に使った唯一無二の空間です。


1階のリビングの奥には、洗面所とバスルームがあります。「日本文化に触れてほしい」とヒノキ風呂に改装。木材は、中津川市の東濃ヒノキを使用しています。豊かな木の香りに包まれながら心身ともにリラックス。ブラインドを上げると和風庭園の中庭を眺めながら入浴できます。

白の美濃焼大型洗面ボールが空間のアクセントとなっている洗面所。洗面ボールは多治見市に工房を構える3RD CERAMICSにオリジナルで制作してもらったのだとか。また、長期滞在のお客様用に乾燥機付き洗濯機を設置しています。

2階も歴史を湛えた梁や柱など、随所に古民家ならではの重厚な雰囲気を感じられます。
北側にはシングルベッドが2台ある部屋があります。セミダブルのベッドが2台ある南側の広々とした寝室は、大きなソファのあるテレビ付きの居間が隣接するスイートルームです。全部でセミダブルベッドが2台、シングルベッドが2台、敷布団が7組あるため、最大11人宿泊可能です。
「部屋の細かい設えもぜひ見てほしいです。イサムノグチのAKARIシリーズなど、デザインに関心のある人たちに刺さるような洗練されたものを選んでいます」
多治見を目的地として、やきものに触れる旅をしてほしい

岐阜のものづくり文化を体感できる一棟貸しの宿泊施設。徒歩10分圏内に、スーパーマーケットやドラッグストアもあるため、暮らすようなゆったりとした滞在も可能です。
現在、宿泊の予約は公式ホームページ内の「Reservation」から。基本的には、金・土・日の週末にオープンしていますが、平日宿泊希望の方は電話(080-7711-0001)での問合せを。宿泊料金は、平日は2名 ¥33,000(税込)~、 1名追加毎にプラス¥5,500(税込)〜。休前日 は、2名 ¥36,300(税込)〜 、1名追加毎にプラス¥7,150(税込)〜です。

最後に多治見への思い、一景の展望について伺いました。
「やきものの産地・多治見を旅行の目的地としてほしい、という思いが強いです。平日でしたら弊社のモザイクタイル体験、TAJIMI CUSTUM TILESのギャラリー見学も可能です。今後は陶芸体験や一景の和室でお茶体験などのオプションを企画していけたらと考えています」

笠井さんは産地を盛り上げたいという強い思いを持ち、さまざまなアーティストとの交流も続けていきたいと語ります。
「岐阜県は地場産業が多く、ものづくりに関する研究機関が多い地域です。しかし、バブル崩壊後は右肩下がりで、担い手不足などを背景に勢いが失われています。地域を盛り上げるには、まず産業を活性化させないといけない。多治見を良くするために美濃焼の産業を元気にしていきたい。ぜひ一景の“オール岐阜”の空間で、岐阜のものづくり産業の力を知ってほしいです。また、今後も世界からのアーティストやデザイナーたちを受け入れ、アーティスト・イン・レジデンスの滞在拠点としても活用し、地域を盛り上げていきたいです」
じっくりと陶芸に触れるものづくりの旅、世代を越えた家族旅行や東濃地方を巡る長期滞在など、さまざまな使い方が可能な「宿 一景」。陶産地・多治見を訪れる大きなきっかけとなるはずです。
【施設情報】
ゲストハウス 宿 一景
【住所】多治見市小田町3-36
【客室】1棟貸し、最大11人まで
【アクセス】JR多治見駅から徒歩15分
【駐車場】あり(6台)
ホームページ https://minoikkei.com/
宿泊予約ページ https://www.chillnn.com/1965629fece2b4
