子どもたちのタイルが彩る、JAとうとの新看板 3RD CERAMICSとの取り組み
2026年6月末、JAとうとの本店と多治見支店が統合した新しい本店が、多治見市音羽町にリニューアルオープンしました。美濃焼タイルや東濃ヒノキなど、地域の材料がふんだんに使われ、木のぬくもりを感じる開放的な空間が広がっています。多治見駅に隣接する虎渓用水広場からのつながりもイメージされているそうで、植栽や色合いなど、駅北エリアとの一体感も感じられます。

新しい建物で訪れる人を迎えてくれるのが、タイルがあしらわれた大きな看板です。この看板を手がけたのは、「第三の陶芸」のあり方を模索しながら多治見で作陶している「3RD CERAMICS」の長屋有さんと土井武史さん。国道248号線沿いに設置された看板には子どもたちが作ったタイルが使われています。実はこの看板、完成までに約2年もの時間と、関わる人たちの思いが積み重なっていました。
今回、3RD CERAMICSの長屋さん、土井さん、JAとうとの丸山尚さんにお話を伺う中で、プロジェクトの始まりについて教えていただきました。
「多治見らしいものを取り入れたい」という思いから始まった

話がスタートしたのは、2024年。JAとうとのリニューアル担当として新しい本店の設計を担当したのは、名古屋の設計事務所に勤める、多治見在住の松下拓真さんです。松下さんは「せっかく多治見に新たな本店を建てるなら、地域の産業である陶器を取り入れたい」と考えました。

JAとうとにも、地域とのつながりを大切にしたいという考えがありました。新しい本店は地域に開かれ、地域に根ざした場所にしたい。その中に多治見らしい陶器を取り入れられないか?と考えていたそうです。
ところが、松下さんはやきものの専門家ではありません。どうすれば建物と陶器をうまく結びつけられるのかを悩んでいたところ、相談したのが消防団員の活動を通じて知り合っていた3RD CERAMICSの長屋さんでした。

「飲み屋さんで話したのがきっかけだった」と笑う長屋さん。もともとJAとうとと3RD CERAMICSも直接のつながりがあったわけではなかったそうです。ひょんなところから始まった話がプロジェクトとして動き出し、約2年かけてひとつの看板になりました。
構想を進める中で、早い段階から出ていたのが「子どもたちにも参加してもらおう」というアイデアでした。新しい本店のお披露目のときに、子どもたちが集まってくれるような場面をつくりたいという思いから、子どもたちと一緒にタイルを作るワークショップが企画されました。
子どもたちの自由な発想が、看板の表情に

何よりもワークショップで大切にしたのは、子どもたちに楽しんでもらうことでした。大人が「ダメだよ」「もっとこうしてね」と言うのではなく、自由に作ってもらうことを重視にしていたそうです。
JAとうとのイメージや農産物、織部ならではの色などをヒントに、当初は葉っぱをイメージしたタイルが考えられていました。ところが、実際に子どもたちが作ってみると、葉っぱだけではなく、ハートや魚など、さまざまな形が生まれました。ワークショップ当日は、設計を担当した松下さんやJAとうとの丸山さんも参加。小さな子どもが手形を押したり、思い思いの形にしたりと、にぎやかで楽しい時間になったそうです。

制作後は、タイルを一つひとつ丁寧に処理し、ゆっくり乾燥させました。看板として子どもたちが触れられる場所に配置することや、全体のバランスも考えながら長い時間をかけて仕上げられたそうです。
自由に作られたタイルは、一つひとつ表情が違います。その個性が、実際に看板として仕上がると不思議とまとまってみえます。きれいに整いすぎていないからこそ、子どもたちが作ったことが伝わる温かみのある看板になっています。

完成した看板を見たとき、「普段いろいろなものを作るけれど、一人で制作するものとは規模も密度も、かかった時間も、関わった人の数も全然違う。味わったことのない感覚になった」と長屋さんと土井さんは話します。
館内にも、多治見のやきものが点在


新しい本店で楽しめるやきものは、道路沿いに立つ看板だけではありません。館内を見てみると、トイレのピクトグラムの背景や、カウンターの案内数字などにもやきものが使われています。建物を訪れた際には、ぜひ探してみてください。さりげない場所にも、多治見のものづくりが息づいています。
「自分でつくった」という気持ちが、ずっと残る場所に

完成した看板のお披露目会には、ワークショップに参加した子どもたちのほとんどが来てくれたそうです。会場では、自分のタイルを探して「これだ!」と見つけ、記念写真を撮る姿もありました。自分の手で作ったものが実際に建物の一部となり、それがこれから何年もこの場所に残っていきます。
「子どもたちに、自分で作ったなという想いが残ってくれたらうれしい」と話す長屋さん。JAとうとの丸山さんも、今回の取り組みを通して、地域とのつながりを大切にしたいという思いを新たにしたと話してくれました。
かつてのJAには結婚式やイベント、クリスマス会など、人が集まる場所としての役割もあったそうです。時代とともにそうした機会は少なくなりましたが、地域密着の金融機関として、人とのつながりを大事にしたいと話します。

「みんなで話していたのが、10何年後かにワークショップに参加した子がJAに就職してきたとか、そうなったら最高だよね」と丸山さんが笑いながら未来について話してくれました。
10年後、20年後、この看板を見たときに「これ、自分が作ったんだ」と思い出してくれたら。もしかしたら、その頃には大人になってJAとうとを訪れているかもしれません。


子どもたちがタイルをつくり、たくさんの人の手を経て完成した看板は、JAとうと本店を彩っています。訪れた際には、ぜひ看板を眺めてみてください。
撮影(一部を除く) 加藤美岬
507-0037
多治見市音羽町3-25-1
TEL 0572-21-2000
https://www.jatouto.or.jp/
