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例) 多治見 まち イベント

こと 場所  2022.06.04

【イベントレポート】人生の楽しみ方 -漢茶会「かまわ庵」- 

あっつう度

あなたは茶道と聞いて、どんなことをイメージしますか。

ちょっと敷居が高くて、自分には縁遠いと感じる人もいるのでは? かくいうわたしもその一人。茶道の知識も経験もないA2編集部・さわだのもとに「かまわ庵茶会 episode1」の案内状が届き、おじゃますることになりました。

「かまわ庵」とは、いったい……!?

 

新緑を背に静かに水面に浮かぶ茶室

 

みんなで楽しめる茶道を

お茶会の会場となったのは、多治見の景色が一望できるセラミックパークMINOの中にある茶室・懸舟庵(けんしゅうあん)。国際的に有名な建築家・磯崎新さんによるデザインです。懸舟庵という名の通り、水辺にそっと一艘の舟が浮かんでいるような幻想的なフォルムで、お茶室へ向かって歩いている時点でわくわくしてきます。

 

わたしが参加したのは最終席の五席目。玉木さんがあたたかく迎えてくれました

少し緊張した面持ちで迎えてくれたのは、「かまわ庵」のメンバーの一人、玉木秀典さん。ながせ商店街で玉木酒店を営んでいます。今回のメンバーを紹介してくれました。

 

月に1度のお稽古は5時間にも及ぶそう

写真前列、左から玉木さん、築炉師で陶芸家の加藤貴也さん、指導者の沼尻宗真先生。後列左から多治見市観光協会の伴旭洋さん、建築士の北村直也さん、陶芸家の井上健太さん、デザイナーの山本真路さん。年齢や職業はさまざまですが、和気あいあいとしていてどこか学生時代の部活動のような雰囲気です。

 

「来春、本町オリベストリートにオープン予定の複合施設『かまや』に携わる人でメンバーが構成されています。この辺りの方言‟かまわん(構わないよ)“を『かまや』にかけて、ダジャレ的に『かまわ庵』と名付けました。お気楽な雰囲気で、敷居が高いイメージのある茶道をみんなで楽しみたいっていう気持ちを会の名前で表しています」と加藤さん。

 

2021年3月に会が発足して、約一年というスピードでお茶会を開催するのは異例とのこと。流儀のお点前はもちろん、歳時記や郷土の文化芸術を学び、一年間真剣に茶道に取り組んだそうです。

 

茶道経験のないわたしにも分かるように、はじめにお茶のいただき方のレクチャーが

多治見だから、この仲間だからできるお茶会

和やかな雰囲気の中、お茶会がスタートしました。まずは待合と呼ばれる部屋でお菓子をいただきます。

お茶会が開かれた5月15日(日)は、二十四節気の立夏、さらに七十二侯でいうと竹笋生(たけのこしょうず)です。気候もさわやかで過ごしやすく、初物が多く出回る季節ですよね。〝初物=はじめてのお茶会〟と〝タケノコ=成長〟と捉え、1回目のお茶席にぴったりだということで、お茶会の随所に竹にまつわるものが登場していました。

 

かぐや姫をイメージして一から製作したお菓子

今回のお菓子は、創業100年を超える老舗の和菓子屋・菓子司 香風かね政(本町4-43)の職人さんの協力で実現。『竹取物語』のかぐや姫をイメージしてデザインされています。「和菓子スケッチを持って行って相談し、3種類もの試作品を作ってくれました。こちらの細かい要望にも快く応えてくれてイメージ以上のものができました」と嬉しそうな山本さん。

 

前日、玉木さんの奥様の実家で採取した竹とタケノコ。竹には竹皮がついていて、まるで生きているかのよう

いよいよ、お茶室へ移動します。

蹲(つくばい)で手を清めて、躙り口(にじりぐち)と呼ばれる小さな入口から中へ。ほの暗いお茶室に一歩足を踏み入れた途端、別世界に来たかのような不思議な感覚になりました。心地よい緊張感の中、目と心がだんだん慣れてくると、さまざまな設えに目が留まります。

 

お抹茶を点てるためのお湯を沸かす炉には、加藤さんの家業でもある電気炉制作で使用する耐熱レンガが。お抹茶を入れておく容器・棗(なつめ)には、升が使われ笠原のアンティークタイルを蓋に使用していました。そして床の間には、タケノコと竹が飾られています。目には見えないはずの‟おもてなしの心“が形になって表れていてとても感動しました。

 

クリエイターとして実際に経験してみることの大切さ

亭主自身が製作した茶碗でいただくお茶は特別な味わい

お茶席には、さまざまな趣の抹茶碗が登場しました。「抹茶碗を作りたくてもこれまでよく分からなかった。器の大きさや重さ、高台の形状など、稽古をしながら作っては使ってを繰り返しながら考えました。お茶をやっているからこそ作れるものがある。これは学校で教わらなかったことです」と話すのは陶芸家の井上さん。続けて、建築士の北村さんからも同じような視点のお話が。「職業柄、各地のお茶室を見ることはありましたが造る機会はなかった。この経験が『かまや』の設計に生かせたらいいなと思っています」

 

お茶を通じて知ること、見えること。皆さんが、クリエイターとして創作の幅が広がっていく手応えを感じているのが伝わります。

 

点ではなく面 できることが増えていく面白さ

各席の亭主はメンバー1人ひとりがつとめる

緊張しながら参加した初めてのお茶会は、とても刺激的で楽しいものでした。特別な時間と空間を共有しているからこそ生まれる楽しさなのかもしれません。これまでわたしが抱いていた茶道の‟固いイメージ“が、崩れた瞬間でした。

 

お茶会後に改めてメンバーの皆さんにお話を伺うと、お互いがリスペクトし合い、仕事にも暮らしにも影響を与え合っている、「かまわ庵」の関係性が見えてきました。会記(パンフレットのようなもの)に記された和敬静寂(わけいせいじゃく)※という茶道の精神をまさに体現していて、とても清々しく、人生の楽しみ方を教えてもらったような気がします。

 

※和敬静寂

千利休の茶道の精神を表す言葉。主人と客人の両方が、互いに敬い、茶庭・茶室・茶器などを清く静かに保つこと。(出典:『学研』)

 

お茶の目的は仲良くなること

「かまや」は、本町オリベストリートにある古民家を改装して22年内にオープン予定です。お茶室のほか、デザイン事務所やオーガニック野菜や雑貨のショップ、カレー店やサロン、イベントスペースなどが入るとのこと。

 

かまやが新たな出会いの場になることをメンバーの皆さんが切に願われていた姿が印象的でした。2回目となる「かまわ庵茶会 episode 2」は、かまやが完成した今春開催される予定とのこと。まちの新たな文化の発信地点・かまやの今後の動きに注目です!

 

 

撮影協力:田中源

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