もの 場所  2022.06.07

【連載】あの店のあの器 -喫茶 わに- 

「美濃焼の発信地、多治見にお住まいのみなさんのお宅では、さぞかし素敵な器を使っているんでしょうね」

 

どこか地方に出かけた時や出張先 などで、ちょっと器に興味がある人に聞かれたことはありませんか?そんな時、「そりゃーもう!」と「やきもの市民」の私たちは胸を張れるんでしょうか。

 

その昔、僕が「やきもの」の仕事を志し移住してきたことを、当時地元の人には「変わっとるね」って言われていました。

 

で、そういう人たちは大体、やきものを買ったことがない。

「え?もらうもんやら」

下手したら拾ったもんみたいな。

 

なんたる紺屋の白袴。あなたたちは「やきもの市民」(さっきも出てきたこれは僕の造語。)やら!と思っていました。

 

 

でも、それは25年前の話。

世代交代が進み、4親等以内に窯業関係者がいる家庭もグンと減り、器をもらう機会もなくなりました。しかし、2014年「美濃焼を使おう」条例が制定。さらにステイホームで衣食住の「住」を素敵に、の情熱も増加傾向かと。そして何より、やきものを購入できる素敵なお店やイベントが市内でどんどん増えている。

 

美濃焼の玄関口、この多治見は、観光客をはじめ、外からお客様をお迎えする事も多いはず。美味しいものを食べながらのおもてなしで、器は私たちの得意技。

 

「やきもの市民」ならではの素敵な食卓、語れるストーリーのある器をみんな使っているでしょう?そこを見てみたい、というのがこのルポの趣旨です。

 

それぞれのお宅に突撃することは難しいので、人気のお店、老舗名店の器ストーリーを紹介してまいります。

 

 

第一回は、ながせ通りの「喫茶わに」。ちょっと自己紹介的なお話。このA2WEBを運営している、たじみDMO本社のある「ヒラクビル」1階、本屋の隣のあのカフェです。

 

僕は食事やお茶に来るより、正直2Fでお仕事の打ち合わせや本屋さんに来る方が多い(店長ごめん)のですが、中央の階段を登りながら大テーブルの客席に目を落とすと、午後のまったりアワーに、マダムのグループが、ある時は仲良し女子大生コンビが、ほのぼのと穏やかに過ごしています。

 

うーむ、良い店の良い眺めだと頷きつつ、あっちの席では1人の少女が読書に耽り、温かいドリンクのカップを両手で包み込むように抱えている姿を「あー、平和な昼下がりだなー」と思ったのも束の間、その手の中のマグにハッと目が止まります。

 

 

少女の手の中にあるコロンとまぁるいマグ。実は僕が前職でデザインしたものなんです。そんなことは店長さん以外、誰も知らないのに、なんか急にヤベッって気がして、いつもそそくさと逃げるように2階に上がってしまいます。

 

 

地元のお店で使ってもらうのは、自宅で使うのとも、友達の家で使ってもらっているのとも、ちょっと違います。

 

少し自分の手から離れて、客観的で、社会に参加できている的な喜びがありつつ、いつもの店の前を通ったら、なんと知らん間に自分の娘がバイトしていて、見つからないように通り過ぎるような、ずっと見ていたいような。気恥ずかしさなのか、心配なのか複雑ですが、あー地元ってありがたいと実感できる幸せな機会です。毎回ハッとしてしまうのは、このマグは僕がわにさんに卸したわけではないからだと思います。

 

 

僕は、一昨年まで土岐市下石町にある株式会社カネコ小兵製陶所で働いていました。小兵さんは磁器の丈夫な素地に表情豊かな釉薬で器を作るのが得意な、創業100年の老舗窯焼き。今は「ぎやまん陶」や「リンカ」シリーズが大人気です。

 

 

10年前くらいでしょうか。僕は会社のコンセプトに則り、磁器だけど手作りのような形状で、土物のようなホッコリ温かみのある釉薬のシリーズを作りました。いろいろなアイテムの中でも、特にマグはその気分を表現できていたと思います。両手で包み込む、たっぷり、優しい。

 

 

このシリーズを気に入って、長年販売してくれているのが、旭ヶ丘の美濃焼卸団地にある光陽陶器の伊藤社長夫妻です。土味を生かした温かみのある器を多く扱っています。

 

土物の販売は大変です。水が染み込まないような加工をしたり、焼き上がりの表情の幅が広いことをお客様に説明したり、丁寧に丁寧に土物の器の良さを伝えてきた人たちです。

 

「このマグが磁器だということすら、分からない人がいっぱいいる。俺は作るところからやってきたから、そこを説明する営業がやってこれた。今でも全国の雑貨屋さんやライフスタイルショップに卸しているよ」

そんな土物のプロが、磁器だけど温かみがある使いやすい器と認めてくれたのかな、と思っています。

 

 

わにの店長の田平さんは、器を選びに、光陽さんへ行きます。おそらく多治見の飲食店の多くは、こうして親しいメーカーや卸問屋さんに相談しながら器を直接購入しています。

 

つまり、思いは手渡しで伝わっていきます。

 

田平さんに、初めてこのカップを選んだ時のことを聞いてみました。

・元「ワタナベ時計店」の歴史ある建物と自分たちでつくり上げた店内のイメージに溶け込むこと

・本屋の隣だからこそ、ゆっくり読書している間ずっと楽しめるくらい容量がたっぷりなこと

・丈夫で長く使えること。適度な重みが手にしっくりくること

雰囲気と強度が両立できているので、ランチのプレートにも同じシリーズの角皿が採用してもらえています。

 

「このマグ人気なんですよ、時々どうしても欲しいというお客さんには販売もしています」

 

こうしてまた思いは伝わっていきます。

 

と、まぁよくある話ですが。作る人がいて、使う人がいて、それを取り持つ人がいる。産地ではそれがよりコンパクトに、日常的に顔の見える人同士でつながっています。

 

 

今回はだいぶ手前味噌でしたが、こんな感じで、一つのお店の、一つの器にも、それぞれ地元ならではの人・もののストーリーがあるはず。なんとなく食べている、いつものお店の、いつものメニュー。「その器、どういう器?」と店主に聞いてみてください。そしてそれを、友達や遠方から訪れたお客さんに語れたら、あなたも立派な「やきもの市民」かも。

 

もし面白いなと思っていただけたなら、ぜひ喫茶わにで実物を手に取って見てください。気に入ったらわにさんで販売してくれます。また小兵さんのECサイトでも購入ができます。光陽さんは卸売が本業なので店舗はありません。10月上旬のたじみ陶器まつりをお楽しみに。

 

【今回の登場人物】

使っている人 本屋のとなり「喫茶わに」

https://hiraku-bldg.com/wani/

https://www.instagram.com/wani_hiraku_02/

つなぐ人 光陽陶器株式会社

https://www.koyotoki.jp/

作っている人 株式会社カネコ小兵製陶所

https://www.ko-hyo.com/

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