戦後から続く手仕事の味。まちの記憶を紡ぐ多治見の郷土菓子「たじみあられ」
多治見定番のおみやげとして馴染みの深い「たじみあられ」。カリッとした軽い食感と優しく素朴な風味は、観光客だけでなく地域の人にとっても身近な存在として長く愛されているソウルフードです。
たじみあられは、かつては小泉町や銀座商店街など多治見市内に5〜6軒の製造元が存在し、地域に根付く銘菓でした。しかし、時代の移り変わりとともに作り手は減少。現在、たじみあられの名と製法を守り続けているのは、宝町に工場と店舗を構える「村瀬のたじみあられ」のみとなりました。
創業から76年。多治見のまちとともに歩み、昔ながらの味を家族で守り続ける村瀬のたじみあられを取材。たじみあられのルーツや素材の背景、次から次への手が止まらなくなる!と評判の味の秘密、受け継がれてきたこだわりや思いを伝えます。
もち米ではなく「うるち米」を使った背景とは

「あられ」と聞くと、一般的には「もち米」を使って作られるものを想像しませんか? たじみあられの最大の特徴は、もち米ではなく、私たちが普段食べているお米「うるち米」を使用している点です。うるち米を使うことによって、サクッと軽い独特の食感が生まれています。

なぜ、たじみあられはうるち米で作られているのでしょうか。そのルーツは創業当時の時代背景にあります。村瀬のたじみあられの創業は今から76年前。4代目の曽祖父にあたる初代が事業を始めました。宝町のあたりは、小麦が盛んに作られていた地域でした。初めは食料品店として小麦の製粉や製麺などを営み、後に米屋へと転業したそうです。
多治見は戦時中に空襲の大きな被害を受け、戦後は物資が不足していました。周りの人たちにおいしいものを届けたいという思いから初代があられ作りを始動します。しかし当時は、もち米は手に入りにくい状況でした。そこで、戦後に配給されていたうるち米を点日干しして活用し、いまにつながる「たじみあられ」が生まれました。
生地作りから3日間。手間暇を惜しまない昔ながらの製造工程

たじみあられの昔ながらの製法は、創業当時から変わっていません。手仕事で丸3日間の時間と労力が費やされています。
まずは、うるち米を丁寧に洗い、干して粉にします。米粉を湯で撹拌した生地をせいろに詰めてふっくらと蒸し上げ、熱いうちに砂糖を加えながら生地を練ります。生地そのものに砂糖が練り込まれている点も、たじみあられの大きな特徴。噛むと米の風味とともに、ほんのりとした甘さが広がります。生地の甘さと醤油などの塩気の絶妙なバランスが、後を引く味の秘訣になっているはず。

次に、蒸し上がった生地を伸ばして乾燥させ、生地を切ります。生地を切って、ロジという道具で干して乾燥させます。生地を折ってバラしながら木箱に入れて、丸2日間寝かせます。
寝かせた生地に火を入れる「煎り」の工程は、気温や湿度、米の質によって火加減や時間を微調整。絶妙な火加減で香ばしく焼き上がったあられに、たまり醤油などを絡めて乾燥させたら、ようやく完成です。
手仕事で作られているため、1日に製造できる量は限りがあり、曜日ごとに作る味を変えているそうです。かつては従業員を多く雇っていた時代もありましたが、現在は家族の手によって一粒一粒に丹精込めて作られています。製造で使う機械や道具は戦後すぐに導入されたものも現役で稼働。手入れと修理を重ねながら大切に使用しています。
醤油・えび・ゆず七味、生姜。食べ飽きない、4種の味のバリエーション

「村瀬のたじみあられ」は4種類の味を展開しています。まずは、定番の味「たまり醤油」です。ごまを練り込んだ生地にたまり醤油をかけた香ばしさが広がります。ザラメや調味料を混ぜて煮立てたたまり醤油は塩気がマイルド。醤油の香ばしさが隅々まで染み込んでおり、噛むほどに口の中に香りが広がります。

袋を開けた瞬間に、ゆずと七味の香りがふんわりと立ち上がる「ゆず七味」。高知県馬路村産の香り高いゆずを使用しています。ピリッと効いた七味が後を引くアクセントに。

一見シンプルな見た目ですが海老の豊かな香りを感じる「えび風味」も人気です。軽い口あたりと生地の甘み、しっかりとした磯の香りが口いっぱいに広がりとクセになると評判です。

4種類の中で唯一甘い味の「生姜風味」は、ピリッとした生姜の香りが特徴的。実は、生姜パウダーではなく、生の生姜を手作業ですりおろして使っています。パウダーでは生姜の香りが足りないとのこと! 特に関西の人に人気の味なのだとか。

どの味も生地に砂糖が含まれているため、食べるとどこか懐かしいふんわりとした甘さを感じます。全種類を買って食べ比べるのもオススメ。ごま風味とえび風味が2袋ずつ入ったギフトボックスや、お歳暮などの贈答用に最適な箱入りも販売されています。
気取らない日常の味として、愛され続けてほしい

多治見市内で唯一となった「たじみあられ」は、3日間という時間と手間暇をかけて作られていますが、気軽につまんでもらえる身近なおやつであり続けたいという願いが込められています。多治見市内や近郊のスーパーマーケットや観光案内所でも販売されており購入しやすいのも広く愛されている理由の一つでしょう。

また、進学や就職などで多治見を離れた人たちにとっても、たじみあられは故郷の味です。「やっぱりこの味!」とホッと安心できる存在になってほしいと村瀬さんは話します。

2016年には店舗をリニューアルオープン。中央自動車道の多治見インターからクルマで5分という立地で、駐車場も完備されているため、遠方からの観光客も多く立ち寄っています。

また、2022年には店舗に隣接したギャラリーも併設。3代目・村瀬定光さんが作陶した「焼締め」の食器や花器などが展示販売されています。ギャラリーの観覧は曜日が限られているため、店舗で声をかけて確認を。

戦後に貴重だったもち米の代わりにうるち米を使ったことで、独自の郷土菓子となったたじみあられ。優しい甘さとカリッとした歯応えがくせになる多治見の味は、日々のおやつとしてはもちろん、観光のおみやげとしても手に取ってほしい逸品です。たじみあられを通じて、まちの歴史と作り手のこだわりを感じ取ってみてはいかがでしょうか。
村瀬のたじみあられ
【住所】多治見市宝町4-135
【電話番号】フリーダイヤル 0120-44-1520 / 0572-22-1520
【営業時間】10:00〜17:00
【定休日】日曜、水曜、第2土曜
多治見市宝町4-135
TEL 0572-22-1520
https://tajimi-arare.com/
