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例) 多治見 まち イベント

もの  2022.07.11

ヴィンテージタイルから見つける、タイルの新しい価値  「Reborn」各務正枝 -たじコン アフターストーリー –

あっつう度

多治見のまちなかを活性化し、市全体がもっと元気になることを目的として、出店や創業へのチャレンジを募集する多治見ビジネスプランコンテスト、通称「タジコン」。2017年から始まり、今年で5回目の開催を迎えます。多治見のまちなかでは、受賞者やファイナリストの活躍に触れる機会も増えてきました。そこで2021年、ファイナリストに選ばれた丸ヲ各務商店 Reborn代表・各務正枝さんのたじコンアフターストーリーをお届け。

 

倉庫の奥に眠っていた美術品のような「ヴィンテージタイル」

 

 

1946年創業の丸ヲ各務商店。笠原の地で外壁・内装タイルや天然石を扱う商社として数千点を超えるタイルを取り扱っています。留学先での出会いから各務正枝さんが嫁いできたのは15年前のこと。生まれ育った熊本を離れて多治見へ、そしてタイル業界に足を踏み入れることになりました。

 

――熊本から多治見に移り、タイルの仕事を始めるときはどんな心境でしたか? 多治見のまちの印象についても聞かせてください。

 

各務正枝(以下、各務):私は海育ちでコンクリートが多いまちだったので、多治見は個人宅にも装飾品としてタイルが使われていてカラフルに感じました。でも、地元・笠原の方はタイルの全盛期から縮小していく大変な時代を生きてきたのだと感じる機会は多いです。私は4年前に家業を手伝い支えになろうとタイル業界に入りました。タイルの知識が皆無だったため、電話口で何を話されているのか分からなかったほど。当時は必死でしたね。

 

 

 

輸出向けタイルのカタログ。表紙の地図には「笠原(Kasahara)」の文字が

 

家業であるタイル商社での仕事が慣れてきた頃、各務さんはある運命的な出合いを遂げます。それは会社倉庫の奥に眠っていた古いタイルのカタログでした。

 

 

――眠っていたヴィンテージタイルを発見したときは、どう感じましたか?

 

各務:古い台紙に張られたタイルは衝撃的な美しさで「なぜ、こんな所にこんなものがあるの?」とビックリしました。珍しい柄やデザインに魅せられ、当時の職人さんに思いを馳せながらずっと眺めていましたね。美術品のようなタイルを眠らせておいてはいけない、と強く思いました。

 

――使わなくなったタイルのカタログが保管されていたんですね。会社の皆さんの反応はいかがでしたか。

 

各務:身近ではこの感動を共有できなくて、素晴らしいヴィンテージタイルの価値をタイル関係者が気付いていなのではと感じました。一歩外に出れば同じ感覚を持ってくれる人はいるはず、と信じてInstagramで発信し始めました。

 

 

数々の出会いの先に「たじコン」があった

 

 

元々、笠原はタイル原料である資源に恵まれ、1993年には59カ所も採掘場があったと言われています。この採掘場も現在は全て閉山し、地場産のタイル自体が年々希少なものとなっています。

 

各務さんが発見した国産のヴィンテージタイルは、約50~60年前のものでした。カタログのまま発見されたタイルは輸出用サンプル台紙として作られたものが多く、製品化されていないデザインも多いのだとか。一枚一枚が個性を持ち、今では作れない製造方法、凝った意匠性に溢れているそうです。

 

 

――ヴィンテージタイルをSNSで発信して変化はありましたか?

 

各務: 実は、発信と販売を始めて1年で私が疲弊してしまったんです。当時は1枚700円程度で販売していたのですが、ヴィンテージタイルがどこで何に使われるのか分からないことに虚しさを感じていました。私自身も愛着があるし、このタイルたちにはもっと役割があるんじゃないかと考えると苦しくて。その頃に多治見の「Mama’s cafe」山本さんが相談にのってくださって、「タイルを生まれ変わらせて世に出すプロジェクトでたじコンに挑戦してみたら?」とお話をしてくださったんです。

 

――葛藤の最中で、たじコンに挑戦するきっかけが生まれたんですね。

 

各務: 新プロジェクト「Reboen」を始めることも、たじコンの挑戦に対しても飲み込むのに3カ月かかりました。ただ、その間にもRebornで現在も商品を作ってくださっている多治見の「山本木工所」山本社長などいろいろな方とのご縁を頂き、周りの人がさまざまなことを授けてくださった。人との出会いの先にたじコンがあったんだと思います。

 

 

たじコン 最終審査出場時の各務正枝さん

 

――人の縁に恵まれ出場することになったたじコン。苦労も多かったのでは?

 

各務:ビジネス経験が浅かったので打合せのアポイント、それに向けた情報収集や書類作成など初歩的なことから大変でした。そして「タイルの人」として立つために、タイルの歴史、メーカーや原料についてたくさん調べましたね。ときに「私は何もできない」と自己肯定感を失って、すごく落ち込んだ時期もありましたが「周りにいるのは長年ビジネスで戦ってきた人たち。私は今ここから始めるのだから背伸びはしない。できないことはできない、ないものはないでOK」と思ってふんばりました。

 

 

 

たじコンを通じて、人生の土台をつくる

 

 

さまざまな縁が交わり、たじコン出場。ファイナリストにも選ばれました。惜しくもグランプリ獲得には至りませんでしたが、たじコンでの経験はかけがえないと各務さんは話します。最後に、たじコンを通じて得たものやその後の変化についてお聞きしました。

 

 

――たじコン出場を通じて、得たものはありましたか?

 

各務: たじコンで一番得たものは、人のつながりですね。アドバイスをくれる人やアイデアを授けてくださるプロフェッショナル、道をひっぱってくれる人たちがいなかったら、武器を持っていない私は何もできなかったと思います。たじコンに出場することで共感してくれる人に出会い、皆さんとともに一歩ずつ成長させてもらえたと思います。

 

 

――ヴィンテージタイル、人との出会いをきっかけに、各務さんの役割も授けてもらえたんですね。

 

各務:タイルの魅力を語れるチャンスを頂いたのだと感じています。3人の子育てをする主婦だった私も「タイル業界の未来」など一歩先の視点を置くことができる。数年前の自分であれば、きっとその視点は持てませんでした。一人きりではできないことも、みんなで旗を振れば動きが生まれますね。

 

 

 

 

――たじコンに対して、まちの人からの反応はありますか?

 

各務:近所の方がたじコンについて書かれた新聞を読んで「地元のためにありがとね」と言ってくださったのはすごくうれしかったです。

 

――笠原の人とのつながりも強くなったんですね。

 

各務:通りがかりにお話ししたことをきっかけに、タイル工場で廃棄処分する予定だったタイルを引き取ったことがあります。そこは20年前に廃業されていて「タイルで良い思いはしなかった」とおっしゃっていたのですが、「こちらで作られていたタイルには絶対に価値がある。当時は誰かの手に渡らずここに残ってしまったかもしれないけれど、絶対いま蘇ります。価値が分かる人を探しますから」とお伝えして引き取らせてもらいました。タイルを引き取って3日で、その工場は更地に。そのときのタイルもRebornを通じて世に出していきます。

 

――Rebornの活動からタイルの魅力に気付く人は多いと思います。各務さん自身を応援する人もどんどん増えているのでは。

 

各務:ありがたいことに、多治見の人たちは応援してくれる体制とネットワーク・フットワークが強い。懐が深いから何かを始めたい人にとっては、すごく良いまちだと思う。温かい人のつながりと距離感が心地良いですね。

 

 

「Reborn×DIY tile」の多目的ラック・ヴィンテージタイルDIYキット

 

 

――現在、多治見出身のDIYクリエイターchikoさんプロデュースの「Reborn×DIY tile」も販売されています。タイルを使った鍋敷きや多目的ラックなどのDIY商品は販売直後で即完売でした。

 

各務:タイルが身近な環境で育ったchikoさんは「地元に貢献したい」という思いが強く、いっしょにプロジェクトをさせていただけることになりました。コロナ禍のウッドショックなどで商品化が遅れてしまったのですが、今年の6月1日にオンラインショップをオープン。ありがたいことに準備していた分はすぐに完売となりました。次回の販売に向けて予約受付中です。

 

――今後のReborn、そして各務さんの目標を教えてください。

 

各務:タイル産業の良さを残し、歴史をつないでいきたいです。建材だけでなくタイル一枚で歴史を語ったり、Rebornで生み出す作品で発信できたらタイルの違う切り口を見つけられると思います。次の世代に生きる子どもたちが「笠原のタイルっていいね」と思えて、まち全体が一つの会社のように世界に向けて美濃焼タイルを打ち出せるまちになるといいですね。

 

 

 

―最後になりますが、今年たじコンに出場する人、挑戦するかどうか迷っている人に向けてメッセージをお願いします。

 

各務:迷っているなら絶対に挑戦した方がいいと思います。人生の中で、自分の土台をつくれるチャンスって何回かあるじゃないですか。たじコンに出ることは、人生をつくるターニングポイントになる。苦しい経験も含めて間違いなく宝物になるはずです。

 

 

 

保管されたヴィンテージタイルからは、当時の職人たちの愛情や遊びごころ、多治見の地に根付くものづくりの底力が伝わってきます。今後はDIY tileや山本木工所と共同開発した商品など、人と人が交わって生み出されたプロダクトからタイルの価値を発信していくReborn。その活動は始まったばかりです。

 

今年のたじコンの応募は、8月31日(水)まで。応募要項や注意事項などの詳細は、WEBサイトをチェックしてください。たじコンに関する問い合わせは、多治見市役所 産業観光課(0572-22-1252)まで。

 

Reborn×DIY tile

丸ヲ各務商店

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