温土とわにの台所メモ
朝、ご飯の鍋を火にかけて、大鍋いっぱいの水を入れて沸かす。
今日も一日の支度が始まります。
ながせ商店街にある「うつわとごはん カフェ温土」と「本屋のとなり喫茶わに」二つの姉妹店の日々のことを綴ってゆきます。台所の暖簾をひょいっとめくって、料理ができるのを待ちながら今日あった事を話すくらいのちょっとした、おはなし。
眠たい目をこすってラジオ体操に向かって、水泳教室で冷えた身体をプールサイドの地面で温める。花火に虫取り、子ども夏休みアニメ特番、外に出たらセミの大演奏。。。忙しくて色鮮やかな夏の思い出の数々。
その中でも忘れちゃいけない友がいますね。子どもたちは嫌いかな。かくゆう私も苦手だった「夏休みの友」と「読書感想文」、トマトや朝顔の「観察日記」などの宿題たち。その中でも今回は「読書感想文」について喫茶わにと、そしてそのお隣の書店”東文堂さん”と一緒に話した日のことのメモ。
そもそも読書感想文って何者。
私、本屋さんの隣でお店をしておりますが、読書感想文が大の苦手。
本は好きですが、原稿用紙を前にすると鉛筆が全く進まなかった私は、本を読むことが課題の目的であれば、感想は不要では!?と偏屈な頭でそう思いながら渋々言葉を捻り出していました。大人になった今、そういえばと、ひらく本屋東文堂本店の店長なおみさんに聞いてみました。
わに「そもそも、読書感想文はなんのためにあるのでしょう?」
東文堂『表現力と頭の中を整理する能力を培うのが目的かな。』
なおみさん曰く、読書感想文は本を読んで感じたこと、思ったことを書いた文章のこと。文章力や表現力を高める、頭の中を整理して自分の言葉で出す力を鍛えることを目的とされているんだそう。大人になってそう聞くと、確かにしっくり理解できますが、子どもの頃の私には難しくて…。
そして、なおみさんも実は読書感想文は好きではなかったんだとか。
『仕事柄、今まで感想文はたくさん書いてきたけれど、思い返しても子どもの頃の課題図書は特に苦手だったな。』
読む本を指定され、その本についての感想文を書く課題図書。好きに読んで、感想を書くだけならばまだしも、興味がある無い関係なく指定された本についての感想文はなかなか進まない。原稿用紙が白紙のままでは出せたもんじゃない。しかし、提出期限はすぐそこ…とただひたすら要約をまとめ上げたり、カレーの作り方を書いたり(これは古い表現かも)して文字数を稼ぐのは致し方ないと白旗を上げたくなるもんです。
書き上げるヒントはないものか。
本のプロ、そして今までたくさんの感想文を書いてきた、なおみさんに書くときのヒントを聞いてみました。
「何を意識したら良いのでしょう?」
『主人公の行動や気持ちを自分に投影して、自分だったらどうするかを考える方法は書きやすいかもですね。』
自分だったら、ここは理解できる、反対だ、ここは凄いと思った等、主人公や周りのストーリーが軸でまとめる感じですね。ふむふむ、なるほど。
『けれど、それだと著者が何を伝えたかったのかを理解、把握して感想(共感)を述べることになるので、自分がどう感じたかを真っ直ぐに現すのが難しいと思って。例えば、何も感じなかったら“ない”でいいと思うのよね。感想だから。たとえそれが周りに絶賛された本だとしても。』
この言葉には、「ですよね!!」と強めの同意と、長年のぼんやり感じていた苦手意識の根本が少し分かった気がした瞬間でした。大人になった今の私が読書感想文を書くとしたらその、何も感じないな。をとことん深掘りして、熱く、何も感じないということを書き連ねたい気が。熱量の方向性が違うかもだけれど。
「何か変わった書き方、まとめ方はあると思います?」
『著者側に立つのは面白いかも。話のラストも展開、きっかけも全て自分の意のまま。例えば、この主人公のここの台詞はおかしい、私ならこう言わせるとかを解説付きで書いちゃうとか。話の中の疑問点を探して、自分ならではの解を書いていくとかも。』
これは…子どもの頃に知っていれば夏休み最終日も怖くなかったなと幼少の自分にドンマイと脳内で言い聞かせたのは内緒。
子どもの頃からの忘れられない本。
『読書感想文ではないけれど、幼稚園の頃によく読んでいた “しずくのぼうけん”はワクワクした記憶があるかな。今だに心に残っている大切な本。読書感想文で言えば…数えきれない程の本で書いてきたから忘れちゃったけれど、赤毛のアンとか。あと今はあまり課題に選出されないけれど三島由紀夫やサガンとか…』
「私は“それから”でしょうか。読書感想文は好きな本を選んで良い学校だったので(多分。勝手にそう解釈していた可能性もあり)、夏目漱石の本を選んで…難しくて苦戦した記憶が。苦戦するくせに毎回、夏目漱石で書きたいと思って挑んでいたんですよね。それで毎年、夏休み最終日まで原稿用紙は白いまま。」
本の話となれば止まらない二人。これ読んだ?知らなかった!わかる、面白いよね!読んでみようかな。と笑いながらのやり取りは、さながら学校の図書室で友達と本を選んでいる時のよう。未知の世界に通じる道、知らない分野への窓に手をかけることができる瞬間のドキドキとワクワクは今も忘れられません。
本は出会いであるとよく耳にします。私もそうだと思いますし、一期一会感も強いなと。子どもの頃にはまとめられなかったことや、理解できなかった表現も大人になった今もう一度出会うことで、もしかしたら理解できるかもしれなくて。さらには違った解釈、感じ方になっているかもしれない。著者の奥のこと、考察し切れなかった行間のことも。
大人になった今、その頁をめくった意味もきっとあるのだろうな。読書感想文が苦手で、課題図書も連想されるから苦手意識があったのだけれど、夏の終わり秋に向かうこの時期に一冊、読んでみようかなと思うほどには、感化された時間でした。
と思った翌日にやっぱり私が夏目漱石に手を伸ばしたのは言うまでもありません。
夏の本メモ /
ひらく本屋東文堂本店 店長なおみさんおすすめ
しずくのぼうけん 著:マリア・テルリコフスカ (福音館書店)
赤毛のアン 著:ルーシー・モード・モンゴメリ (新潮社 他)
三島由紀夫(金閣寺 等)、フランソワーズ・サガン(悲しみよ こんにちは 等) 他にもたくさんあります。興味がある方はひらく本屋東文堂のなおみさんにお声かけを。
喫茶わに 店長たひらおすすめ
それから 著:夏目漱石 (新潮社)
他にもありますが、わに店内にもおすすめ書籍が並んでおりますのでよかったらまずはそれから手に取ってみても。
○ひらく本屋東文堂本店・本屋のとなり 喫茶わに
【営業時間】10:00〜21:00 (日曜日のみ〜19:00)
【定休日】水曜日
【住所】〒507-0033 岐阜県多治見市本町3-25 ヒラクビル
Instagram ひらく本屋東文堂本店
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