「気楽にご近所落語会 vol.2 春風亭朝枝一人会」開催のお知らせ
昨年(2023年)、多治見市内にある3つの公共施設で上方落語家・桂二葉さんの落語会が開催されました。どの会場も満員御礼で好評を博したのも記憶に新しいですが、その第二弾となる「気軽にご近所落語会」が再び開催されます。
今回出演するのは、二ツ目の春風亭朝枝(しゅんぷうていちょうし)さん。
バンドマンから板前に。その後、ラジオで偶然耳にした落語に心を奪われ、春風亭一門に弟子入りすることになったという異色の経歴の持ち主。主催者の多治見市学習館スタッフ・三宅朝子さんは、朝枝さんの印象をこのように話します。「表情豊かな表現力と江戸の粋を体現する高座は、若手とは思えない老練ささえ感じさせます。独自の世界に引き込む話芸は必見ですよ」
心を揺さぶられた芸能「落語」との出合い
ここで、「気軽にご近所落語会 vol.2」制作スタッフの岸田哲也さん(落語ステージ・ワゴン)に登場いただき、朝枝さんの落語にかける思いに迫っていきます。
岸田哲也(以下 岸田):20代後半での入門は、まぁまぁ遅い方ですが、それ以前は何をされていたんですか。
春風亭朝枝(以下 朝枝):実家の料理屋で板前修業をしていました。栃木県の真岡市にあります。
岸田:落語との出合いは。
朝枝:料理屋の休み時間にたまたま聞いていたラジオで流れたんです、落語が。ただ、それが落語だとその時には分からなかったかもしれないです。なんだか知らないけど面白いな、と。落語といえばテレビの「笑点」しか認識がなかったので。
岸田:落語といえば笑点というのは、かなり初心者……というよりも、何も知らない人とも言えますね(笑)。そこから一気に入門ですか!
朝枝:なににつけ、ハマると深く知りたくなるみたいで。それから、近くの図書館に出向いて、落語のCDとか本とか、片端から借りてきて、聴きまくりの読みまくりです。そうこうしているうちに、都内には寄席という小屋があるらしいと。
岸田:やっと、寄席が出てきました(笑)
朝枝:はい。それで、私にとって都内の入り口は上野だったので、鈴本演芸場とお江戸上野広小路亭に行きました。一人の人が話すだけでこんなにも心を揺さぶられるのか……!と。初めての経験でした。腹がよじれるくらい笑った後で、最後は涙がぽろぽろ流れてくる。本当に凄い芸能なんだなと実感したんです。
岸田:その感動は分かりますが、落語に感動すること イコール 自分でもやってみるぞ、になったんですね。そのジャンプが凄い。
朝枝:これも私の性格でしょうか。のめり込んだらとことんですし、やってみたくなるんですね。小咄とか短い噺を覚えたらできたので、ますますやってみたい……!と。その思いを抱えていた時に、師匠の高座に出合って惚れ込んでしまいました。
岸田:池袋演芸場で、(春風亭)一朝師匠がトリを務めていた時と伺っています。弟子入り志願は緊張されましたか。
朝枝:それはもう、大変です。タイミングを計るのが難しくて。そもそもいつ楽屋入りなのか分からないので、ずっとエレベーター前で張り込んだり、向かいにあるケンタッキーの角から覗いてみたり……追い出し太鼓がなってから行ったら、すでに帰られた後だったり……結局 千秋楽でやっと弟子入りをお願いできました。
岸田:実際には一度断られて二度目で叶ったんですよね。そして見習いから前座修業です。その時代に多くのことを吸収されたと思いますが、特に印象に残っていることはありますか。
朝枝:兄弟子の(春風亭)一之輔兄さんが「一朝師匠は家に来ないで稽古しなさい、という教えだった」と話されていて。それならと、前座時代はひたすら稽古していた記憶です。一門の中で末っ子の10番目なので、直接師匠からというより、兄さんたち(※1)から間接的に吸収するスタイルでした。
※1 朝枝さんは10番目の弟子なので上に9人の兄弟子がいます。兄弟子の中には、これまで多治見で幾度も落語会を開催している一之輔師匠、一蔵師匠、一花さんも。
岸田:その稽古ですが、ネタの憶えはいかがですか。
朝枝:かなり時間がかかるタイプでして、ひとネタ1カ月ぐらいかかります。それも家にいると全く集中できないので、散歩中とか喫茶店やカラオケボックスで憶えています。
岸田:今は何本ぐらいが持ちネタでしょう。
朝枝:50席と少し、でしょうか。
岸田:もっと増やしていかれる。
朝枝:はい。滑稽噺(※2)とか人情噺(※3)とか、あまりジャンルに関わりなく、憶えられなくなる歳が来るまでは、ひたすら憶えまくろうと思っています。
※2 落語や小咄などで、滑稽味やばかばかしい面白さに重点を置いたネタの総称のこと。
※3 おかしみだけでなく、ほろりとさせる情感に訴えかける噺の総称。下げ(オチ)のあるネタと無いモノがある。
岸田:まさにのめり込むタイプですね。ネタ選びの基準のようなモノはありますか。
朝枝:入門前に聴いて感動した噺を覚えています。
岸田:例の図書館から借りたCDの落語ですね!(※4)
朝枝:そうです。実はリストにしていたんです。
岸田:いやぁ、すごいな。良い図書館に巡り合ったというか、すでにその時から噺家になる準備が始まっていたんですね。では、特にこの噺に力を入れるということは。
朝枝:そういうことで言えば、芝居噺(※5)は師匠からすべて習いたいです。
※4 多治見市図書館でも、豊富な落語の関連資料・CDを取り揃えています。
※5 題材に芝居(歌舞伎)を使った噺の総称。特に「仮名手本忠臣蔵」に材を採ったネタが多い。
初心者も歓迎!大衆娯楽を間近で楽しもう
実は、朝枝さんの多治見来訪は今回が初めてではありません。23年8月にバロー文化ホールで開催された「落語theディスカバリィ~東西落語聴きくらべの会~」が多治見での初高座でした。
今回の「気軽にご近所落語会」の会場は、寄席でも劇場でもなく、公民館とヤマカまなびパークの小さなホールです。2日間で3公演あり、多治見の中心地にあるヤマカまなびパークで3席、南に位置する市之倉公民館2席、そして北の旭ケ丘公民館で2席。身近な場所で、目の前で江戸前の芸をたっぷり堪能できるまたとない機会です。
落語に行ったことがない人も、まずは気軽に出かけてみてください。
あなたも‟朝枝中毒”にかかってみませんか?
■気軽にご近所落語会 vol.2 春風亭朝枝一人会
〇ヤマカまなびパーク会場(豊岡町1-55)
【日時】2024年3月9日(土)17:30開演
【料金】前売り1,500円、当日1,800円 好評発売中
【問い合わせ先】0572-23-7022(月曜休館)
〇市之倉公民館会場(市之倉町8-138)
【日時】2024年3月10日(日)11:00開演
【料金】前売り1,000円、当日1,200円 好評発売中
【問い合わせ先】0572-22-3776
〇旭ケ丘公民館会場(旭ケ丘8-29-99)
【日時】2024年3月10日(日)14:30開演
【料金】前売り1,000円、当日1,200円 好評発売中
【問い合わせ先】0572-27-6826
〇3会場共通
全席自由、未就学児入場不可
【プレイガイド】ヤマカまなびパーク、市之倉公民館、旭ケ丘公民館
【主催】落語ステージ・ワゴン、多治見市学習館、市之倉公民館、旭ケ丘公民館
【制作】落語ステージ・ワゴン
◎「気軽にご近所落語会 vol.1」
~落語の魅力や「上方落語」と「江戸落語」の違いについて
507-0034
多治見市豊岡町1-55
TEL 0572-23-7022
https://www.tajimi-bunka.or.jp/gakushu/