美濃焼ミュージアム企画展「没後100年 成瀬誠志とその周辺」
多治見市美濃焼ミュージアムでは、9月2日から、没後100年を迎えた中津川出身の陶芸家・成瀬誠志の作品展が開催されています。先だってA2webmagazineでは展覧会の情報はお届けしましたが、プレス内覧会が行われたのでA2編集部も出かけてきました。
幻の大作「陽明門」
成瀬誠志の代表作の一つ「陽明門」が会場を入ってすぐのところに展示されています。これは、国宝・日光東照宮をモデルにした作品で、約3年にわたる製作期間をかけ、何度も改作しながら完成させた超大作です。1893年のシカゴ万国博覧会に出品され、銅賞を受賞しました。
写真を見ていただくとお分かりのように、「陽明門」は屋根の部分しかありません。これはコロンブス大博覧会に出品するために船で輸送中、大部分が破損してしまったのだそう。
大きさは実物の25分の1、1尺5寸(45cm)四方、高さ2尺5寸(75cm)。壁の装飾や天井の絵画まですべて実物どおりに再現されています。今のようにスマートフォンで撮影して記録に残すこともできない130年も前の時代に、このような緻密な作品を作り上げた成瀬誠志の情熱と根気に驚かされます。
360度さまざまな角度から鑑賞できるように展示されているので、ぜひお近くで、目を凝らしてじっくりとご覧ください。
表現する力、モノを見る力がある人
今回の展覧会を監修した髙木典利さんは、成瀬誠志の魅力についてこのように話します。
「最近の言葉だと‟超絶”とか言いますね。同じ表現者として見ても、成瀬さんの作品を見ると、どうしてこんなものが作れるのかと驚きを禁じ得ない。万博に出品するくらいの技術の持ち主で、海外でも高く評価されています。成瀬さんは、絵付けの素晴らしさはさることながら、例えば香炉にある人物は、口の中の歯も一本一本作ってあります。目玉の中に瞳が描いてある。虫眼鏡で見ないと分からないくらい細密な世界。成瀬さんはそこまでこだわって作っている。表現する力、そしてモノを見る力がある人です」
内覧会では、成瀬誠志の生い立ちや作品の背景、見どころなどを丁寧に解説していただいたことで、理解が深まり、それぞれの作品のどこに注目すべきか観賞の視点も広がりました。美濃焼ミュージアムでは、毎月第4土曜日には定期的に学芸員による無料ガイドツアーを行っているので、こちらに参加してみてはいかがでしょうか。
同時開催の中津川会場(中津川市苗木遠山資料館)では、4点(※)の作品が展示されています。ぜひこちらも併せてお楽しみください。
金彩色絵屋島合戦那須与一像、東京薩摩獅子鈕香炉、鬼瓦、花瓶
■没後100年 成瀬誠志とその周辺
【会期】2023年9月2日(土)~2024年1月28日(日)
【時間】9:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(祝日の場合は翌平日)・年末年始
【場所】多治見市美濃焼ミュージアム ギャラリーM1
中津川市苗木遠山史料館でも同時開催 詳細はこちら
※多治見会場と中津川会場では展示作品が異なります。会期中に使用したそれぞれの観覧券を提示すると団体料金に割引されます(1枚につき1名のみ有効)
【入館料】一般320円(260円)、大学生210円(150円)
( )は20名以上の団体料金
高校生以下、障害者手帳の交付を受けている方とその付添いの方1名は無料
■関連企画 中庭コンサートvol.6
成瀬誠志の生きた時代・明治時代をテーマに選曲された名曲をお届けします。
【日時】11月25日(土)14:00~14:30
【場所】多治見市美濃焼ミュージアム 中庭
【出演】大村絵里(ソプラノ)、藤掛幹奈子(ピアノ)
【定員】40名(最大70名)
【申込み】多治見市美濃焼ミュージアム 窓口・電話(要事前申込)
※参加無料(観覧料が別途必要)
507-0801
東町1-9-27
TEL 0572-23-1191
https://onl.la/ruP5KG4