こと 場所  2022.10.01

玉木酒店が作家やまちのために実現した「たまき杯」への思い -後編-

ながせ商店街の「玉木酒店」。ながせ商店街で地元作家の陶器が並ぶイベント「商展街」を企画するなど、多彩な展示を通じて生まれたつながりによって、現在「片口と盃の祭典 たまき杯」が開催されています。

 

玉木酒店の玉木秀典さん、陽子さん夫妻、企画者の一人である新町ビルの水野雅文さんに酒器の祭典「たまき杯」、そして作家への思いをお聞かせいただきました。そして、この後編では陶芸家の河内啓さんに作り手の視点も取材。子どもから酒好き・器好きまで存分に楽しめる「たまき杯」。会期は10月2日(日)まで。

 

前編は「陶芸家とのご縁をつないで  56名の作家による酒器の祭典「たまき杯」 -前編-」こちら

 

 

やきものの知識がなくても、作品と向き合える企画に

 

 

――展示開始から2日間で200人以上の方が投票されました。来場された方の反応はいかがですか?

 

玉木秀典(以下、秀典):見てくれた方は、本当に面白いと言ってくれています。「多治見ならでは」「このまちだからできるよね」といった感想も。作家さんも楽しんでくれています。

 

――一般の方の票はかなり割れているとのことですが、皆さんどんな風に選ばれているのでしょうか?

 

玉木陽子(以下、陽子):酒呑みが選ぶもの、デザイン性や作家の名前を重視する人、hularitoさんなど飲食店や酒蔵ならではの視点も。観点の違いがすごく面白いです。

 

―― たとえば、お酒が好きな方はどこで選んでいますか?

 

陽子:やっぱり注ぎやすさ。持ち心地を皆さん試されるかな。

 

水野雅文(以下、水野):酒蔵や飲食店の方が選んでくださるのも面白いですよね。陶芸のコンペだけど選ぶのは酒のプロという。

 

 

―― 私も投票させてもらいましたが体験したことがない器の「見方」だと感じました。投票という主体性のある行動を通じて、作家さんの幅広さを改めて実感しました。

 

水野:それでいうと、「美濃焼に触れる」場合は陶芸体験や工場見学、あとは買い物しか選択肢はない。だからこそ、買わなくても参加できる、という企画に一石を投じてみたかった。何か一つを決めるために、知識がなくても作品を選ばなきゃいけない。その環境をここで作ったんだよね。自分たちのできる範囲で、やきものに向き合ってもらうための時間を作るために。

 

秀典:子どもたちもしっかり選んでくれて、「ここがよかった」と投票用紙に書いてある。僕たちの頃は、陶器は買うものじゃなくて貰うものだったし、実際に僕が初めて酒器を買ったのは35歳ぐらいだった。多治見の地場産業だからこそ、低く見てしまっている現状も根底ではあったりする。だからこそ小学生がこうやって選んで、どこが好きだったのかを考えて書いてくれるのはすごくうれしい。この子たちが、この感覚を持ったまま大きくなってほしいなと思う。

 

――まだ個展はやったことがない作家さんも出展されていますよね。若手作家さんの挑戦の場にもなっている印象です。

 

秀典:5年前から開催している司ラボ(多治見市近郊の陶芸作家のためのオープンシェア工房)の「伝手展」もそうだけど、一つのお題を出すことで得意じゃないことに対して挑戦しなきゃいけなくなる。それが結果、良い方向に働くだろうと僕は思っています。今回も片口を難しく考えていた作家さんがいて、それを話してくれた子もいました。

 

展示の手伝いで店を訪れた(左)河内啓さんと(右)水野雅文さん

 

――ちょうど河内啓さんがいらっしゃったので、お話を伺いたいです。この企画に参加されていかがでしたか?

 

河内啓(以下、啓):多治見はいろんな作家さんが出入りしていて、全国的に見ても作り手の層が厚いけど、まとまった展示の企画がなかった。今回、たまちゃん(秀典さん)がちょっと声をかけたら全国レベルのクオリティの作家たちが集まったけど、この企画は東京の一流のギャラリーでやっても見応えがある。全く引けを取らないレベルだからすごいと思う。これが何回も続いて全国的に有名になればいいな。

 

――普段の個展とは違う展示方法ですが啓さんはどのように他の作品を見られましたか?

 

啓:戦うわけじゃないけど、こういうレベルが高い中でやると刺激を受けますね。俺もこういうものをやりたいなって。「片口と盃」という枠があると見やすい、比べやすいし、すごく楽しかった。たまちゃんの人柄で集まるからか、作風は全部違うけれど一緒のコミュニティというか、共通の感覚や思いを持っている作家が集まっていて展示としてはまとまりがあると思う。

 

今回、インタビューに加わってくださった河内啓さんの作品

 

――ちなみに、皆さんどういう目線で皆さんが選ばれるかは気になりますか?

 

啓:家庭で使う人、飲食のプロとして店で使う人、他の作家たち……それぞれどこに注目しているかが気になる。賞に選ばなくてもじっと見ているのはどれか。重さ、キレや飲みやすさ、それは仕草から分かるから参考になるし面白いですね。

 

陽子:水切り選手権をやってほしいという意見もあった。「水のキレは誰にも負けん」って!

 

――普段、作家ものに触れていない人でも今回の企画は参加しやすいと感じます。「やきものの知識がないから分からない」と思っていても、直感的に好きなものを選べるのは楽しいですよね。

 

啓:作家としては、そういう人の声もすごく聞きたい。知識のない、まっさらな人が見て感じるものがすごく重要。作家だけだと「この釉薬は~」とかの話題に走りがちだけど、やっぱり器は道具だから使う人の生の声を聞けるとうれしい。

 

――ちなみに、こういった機会が作家同士の情報交換の場になるものですか?

 

啓:多治見の気質かもしれないけれど、秘密や門外不出とかの感覚が全然なくて全部教えてる。教えた方が堂々としている、という雰囲気もあるのかな。美濃はいろいろな焼き方があるし割とシェアしているかな。

 

玉木酒店の(左)玉木陽子さんと(右)玉木秀典さん

 

――では最後に、会期のラストに向けて、たまき杯に来られる方へ一言お願いします!

 

秀典:毎日展示を見ている僕自身、選びたくなる作品が日々変わります。たぶん、自分の体調や気分で変わるんだと思う。だから1回と言わず、1日1投票なので何回でも遊びに来てください。それぐらい楽しめると思います!

 

陽子:作家さんの名前を覚えて帰ってほしいですね。作家さんがこんなにたくさんいるんだと感じられるかな。

 

秀典:たしかに、この地域に多くの作家さんがいることを知らない人も多いよね。

 

啓:他地方のクラフトフェアを見ても美濃焼の人は多い。東濃や瀬戸を含めたこの一帯の作家層は、世界的に見ても多いけどあまり知られていない。すごくレベルが高いけれど、作家自身も自分たちがどれぐらいの所にいるのかを分かってないからもったいない。

 

――加えて、ながせ商店街や多治見に対する思いも聞かせてください。

 

秀典:自分たちの商店街を盛り上げたいという気持ちはあるけれど、お客さんにしてみたらながせ商店街も駅前商店街も、銀座商店街や広小路商店街だって一緒だと思う。だったら、やっぱり一本の筋よりもエリアで考えていきたい。市外の人から「最近、多治見って面白いね」という声が聞こえてくるからこそ。同じベクトルの人同士が手をつないで、コミュニケーションを取ってまちを盛り上げていきたいですね。

 


 

 

「たまき杯」のコンペは、10月1日の「日本酒の日」に合わせて2年に1回の開催を予定。第2回のコンペまでの間には、受賞者の展示を行うそうです。酒蔵や飲食店、そして一般投票による受賞者の発表は会期最終日の10月2日(日)を予定しています。何度も訪れて、一票投じてみては? 最新情報はInstagram(@tamahide)をぜひチェック!

 

 

玉木酒店

 

多治見市本町4-46

【電話番号】0572-44-8455

【営業時間】9:00~19:00

【定休日】水曜日

 

玉木酒店

507-0033
岐阜県多治見市本町4-46
TEL 0572-44-8455
https://www.instagram.com/tamahide/

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