多治見で愛されるローカルスーパーを突撃!vol.4 駅北ファーム 編
これまで市内のローカルスーパー3店をレポートしてきましたが、毎回たくさんの反響をいただいています。食料品は、私たちの日々の生活に欠かせないもの。多くの方が‟知りたい情報“なのだと改めて感じました。
さて、今回足を運んだのは、JR多治見駅の北側、多治見市役所駅北庁舎の向かいにある産直市場「とれたて新鮮!駅北ファーム」。駅のすぐそばで交通量の多い通り沿いにある小さな商店です。
母がよく利用していたこともあり、駅北ファームの野菜や加工品が食卓にのぼることが多かった我が家。素材そのものの味が濃くておいしい。それを知っているのにスーパーの利便性から、なかなか訪れることがなかったお店です。でも、これからは定期的に通いたい!と心に決めました。その理由は、A2編集部・さわだのレポートで感じ取っていただけたらうれしいです。
多治見の小さな‟道の駅”
2023年6月で開業から10年目を迎える駅北ファーム。多治見をはじめ土岐や瑞浪など東濃地方の農産物や加工品が揃います。農業や畜産を営む個人や法人が加入している多治見市園芸畜産振興会が経営を行い、JA(農業協同組合)や多治見市役所が家賃を補助しているそう。「家賃だけじゃなく、関係機関に協力を得ながら運営しとるよ」と店長の山田信幸さん。東濃弁があったかくて親しみを感じます。
取材に伺ったのは5月の中旬。お店に足を踏み入れると、鮮やかなグリーンが目に飛び込んできました。ほうれん草やチンゲン菜などの葉野菜、スナップエンドウや絹さやなどの豆類、キャベツ、ブロッコリー、レタスにネギ……。見るからに新鮮な野菜が、それぞれの棚に溢れんばかりに並びます。値札を見ると100円代のものがほとんど。安い!
さらに値札には、氏名と町名が書かれています。これは生産者名と栽培(または加工)している場所を示しています。同じ種類の野菜でも、複数の生産者がいるのが分かります。どんな人が駅北ファームに卸しているのでしょう。
「法人はごく一部で個人がほとんどやね。年代は60~70代で、自宅の敷地内にある畑で栽培している人が多い。野菜づくりの講習会もやっとるで、皆さん、常に勉強してるよ」たじみ農産物直売所出荷者協議会という組織に加入している生産者のうち、137人が駅北ファームに登録。現在は70~80人くらいの方が日々、作物を納めています。
生産者のうちの一人、坂﨑寛治さんの畑に伺って、お話を聞かせてもらいました。
お客さんに喜んでもらえることが何よりの励み
消防署で働く傍ら、ずっと家庭菜園をしていたという坂﨑さん。駅北ファームが開業した当初から野菜を卸しています。
近所や知り合いに収穫した作物をおすそ分けすることも多かったそうで、退職後、本格的に野菜作りを学びたいと、JA主催の「野菜塾」に2年間参加。その時に、直売所で野菜を売ってみないかと声をかけられたのがきっかけで、現在に至ります。
「駅北ファームに卸す前は、‟なってるだけでいい”と思っていたけれど、若干でもお店に出すと喜んでもらえるのがうれしいよね」と、柔和な笑みを浮かべながら、作物を愛おしそうに見つめる姿が印象的です。
自宅近くにある畑のほかにも、離れた場所に畑や田んぼ、栗畑を所有。今はナスやキュウリ、トウモロコシなど夏野菜を中心に育てています。年間、何種類くらい出荷するのか伺うと「数えたことないなぁ、どれくらいだろう」と笑う坂﨑さん。畑にある何種類もの作物は、太陽の光を浴びてきらきらと輝いてみえます。整然とした様子に、坂﨑さんの丁寧な仕事ぶりがうかがえました。
「ここのところ、納品するとすぐに売れてしまうみたい」と話していたのは、坂﨑さんの親の代から種を継承して栽培し続けている大豆。栽培法はもとより、種や苗の品質が味に大きく影響を与えるのですね。
「野菜は育てる時間が長いけれど、採れる時は一気だからね。気候とうまく付き合いながら、その時期ごとに採れるものを納めているよ」多治見も以前に比べ、随分と温暖になったそう。「今の時季はもう日中は暑いから、朝は5時から始めて午前中いっぱい。あとは夕方から暗くなるまで作業してるよ」
気候変動のほかにも猪など鳥獣被害もあり、なかなか思うように作物が採れなくなったと肩を落とします。丹精込めて作ったものが、収穫直前でダメになってしまうのはあまりにも悲しい。何か対策はないものでしょうか……農業の厳しい現実を知りました。
納品に行った際、開店を待つお客さんに出会うことも多いそう。「今日は何を持ってきたの?」「この間の〇〇おいしかったよ」と声をかけられることもあるのだとか。お客さんから直接、そして山田店長さんからも感想を伝え聞いて、苦労も多いけれど、やりがいにつながっているそうです。
生産者の方からの話を聞いたことで、私たちが普段何気なく手に取っている食品のありがたみを感じました。
安心・安全が一番のこだわり
場面は、駅北ファームに戻ります。山田店長に、駅北ファームのこだわりを伺いました。
「ここにある商品は農薬調査もしていて、農薬を極力使わないで栽培されているものだから安心。お客さんも生産者の名前を見て商品を買ったりね。この人の商品はおいしいって分かっている、そういう意味での安心感もあるんじゃないかな」
生産者の顔は見えないけれど、きっと商品から伝わってくるものがあるのでしょう。それぞれの生産者にファンがいる。素敵な関係性だなと感じました。
「野菜は、ほとんどが朝採り。収穫してから店に並ぶまでの時間が短いから新鮮だよ」と山田店長。採れたての野菜を求めて、午前中に来店する人が多いそう。「その日によるけど、午後だと品物あらへんで」と笑います。
スーパーに並んでいる野菜の多くは、JAなどの出荷業者から市場を通しているため、店頭に並ぶまでに時間がかかります。そのため、生産者は最適なタイミングよりも少し早く収穫しているそう。直売所では、その日の朝に採れたものを直接生産者が持ち込むので、一番おいしい状態になるまで栽培できる。味に違いが出るわけです。
地元で採れた旬のものを食卓に
山田店長にこの時季のおすすめ商品を伺うと、トマトと即答。「今あるのは冬春トマトやけど、もう少ししたら夏秋(かしゅう)トマトが出てくるよ」と、聞き慣れない名前。品種名かと思いきや、栽培時期によって分類があるのだとか。これからはキュウリやナスなど夏野菜がどんどん入ってくるそう。
「もうこれでシーズンも終わりだけど、廿原ええのう(廿原町)のいちごは人気やね。基本的にお店へ卸していないから希少価値もあるし、何よりおいしい」
タケノコやわらびなどの山菜が並べば、春が来たと感じたり、旬の食材で季節を感じられるのは体にも心にもやさしそう。今の旬が一目で分かるお店です。
漬物やジャムなど加工品も人気
青果コーナーより売り場面積は小さいですが、加工品も揃います。梅干しや漬物、餅のほか、廿原ええのうのジャム、牧田蒟蒻店(錦町)のこんにゃく、そして、パンコウバ(池田町)のパンなど。ここで手に入るのはうれしい!
豆腐など、多治見の生産者がいないものに関しては、瑞浪にある農産物直売所「きなぁた瑞浪」で定期的に仕入れているのだとか。「生産者のタイミングもあるし、多治見ではつくれないものもあるからね。商品のジャンルが偏らないように心がけとるよ」
農家を育てることが、やりがいに
駅北ファーム開業までに一年の立ち上げ期間を経て、今年で11年目を迎える山田店長。
やりがいを伺うと「そうだなぁ、強いて言うなら農家の人を育てることかな」と照れ臭そうに話してくれました。納品に訪れる生産者の方と和気あいあいと話しながら、阿吽の呼吸で値付け作業などをする様子は、長年の信頼関係が見えてきます。
「夏場は暑くて冬場は寒い中での作業。収穫量も天候に左右されるし、肥料もどんどん高騰してる。農業の現実はなかなか厳しいよ」それでも、おいしい野菜を求めて来店してくれる人がいる限り、値段もスーパーよりは安く、安全・安心にもこだわりながらこれからも良いものを提供したい、と話してくれました。
消費者である私たちも「安さ」だけを重視するのではなく、地元のものを買ったり、その作物がどのように作られているのかを考えながら商品を選ぶことが、農家を応援することにもつながるのではないかと感じました。
駅北ファームでエネルギーあふれる地元野菜を手に入れて、ぜひ旬のおいしさを感じてみてください。
■駅北ファーム10周年記念イベント
【日時】2023年6月3日(土)10:30~14:00
購入者に粗品をプレゼント(なくなり次第終了)
■10周年記念感謝セール
店内すべての商品を10%引きで購入できます
【日程】2023年6月5日(月)~6月10日(土)
【時間】10:30~16:30
◎たじみ農産物直売所「とれたて新鮮!駅北ファーム」
【営業時間】10:30~16:30
【定休日】日曜日(祝日は営業)
【駐車場】ジョイフル多治見横に8台
507-0037
音羽町1-235 ジョイフル多治見1F
TEL 0572-44-8317